-診療報酬改定情報(その2)-

 7対1・10対1入院基本料の平均在院日数短縮、7対1入院基本料の重症度・看護必要度基準の厳格化、10対1入院基本料に重症度・看護必要度基準の導入について取り上げられていました。先に掲載した重点的に取り組む課題(以下「重点課題」という)の「高度急性期、急性期等の病院機能にあわせた入院医療の評価」に該当する内容だと思います。
 「社会保障と税の一体改革案が示す2025年の医療・介護提供体制のあるべき姿」(以下「2025年モデル」という)の議論の中で、高度急性期を担う病院の平均在院日数は15~16日だという数字が示されています。いきなりここまで短縮はされないまでも、今回改定では、それぞれ2日ほどの平均在院日数短縮を覚悟してもいいかもしれません。
 一方、13対1・15対1入院基本料にあっては、入院90日超患者の特定除外項目の厳格化が取り上げられていました。特定除外項目を廃止して患者の病態に応じた包括点数の導入が落としどころではないかと述べています。
 いずれにしても、13対1・15対1入院基本料を算定している病院にあって、90日超の患者についてはかなりの点数ダウンを見込んで対策を講じておく必要があるかと思います。

―診療報酬改定情報―

 日経ヘルスケア11月号に「総力特集 2012同時改定はこうなる」と題して、診療報酬・介護報酬改定について、かなり踏み込んだ詳細な情報が掲載されていました。総力特集としただけあって、渾身の中身になっており読み応え十分の内容でした。まだお読みでない方は是非ともお読みください。
 社会保障審議会医療保険部会の資料を前回ブログ掲載しましたが、その重点項目に関連した内容も盛り込まれていましたので、注目したい内容をいくつか取り上げ、何回かにわけてコメントしていきたいと思います。

-診療報酬改定重点項目-

 10月26日付けで第47回社会保障審議会医療保険部会の資料が公表されました。その中で重点的に取り組む課題が示されており、私が注目したい項目を以下に掲げ、何回かに分けて感想等を述べていきたいと思います。

【急性期医療の従事者の負担軽減】
○救急、産科、小児、外科等の医師等の医療従事者の負担軽減に資する勤務体制の改善等の取組に対する評価
○救急外来や外来診療の機能分化の評価

【医療と介護の役割分担の明確化、地域連携の強化、在宅医療充実】
○在宅医療を担う医療機関の役割分担や連携の評価
○早期の在宅療養への移行、地域生活への復帰に向けた取組の評価
○退院直後等の医療ニーズの高い者への重点化等の訪問看護の充実
○維持期のリハビリテーション等における医療・介護の円滑な連携

【充実が求められる分野】
○緩和ケアを含む、がん医療の充実
○認知症の早期診断等、重度の認知症の周辺症状に対する精神科医療の適切な評価
○身体疾患を合併する精神疾患救急患者への対応等急性期の精神疾患に対する医療の適切な評価
○地域移行を推進し、地域生活を支えるための精神科医療の評価
○リハビリテーションの充実

【医療機能の分化と連携】
○高度急性期、急性期等の病院機能にあわせた入院医療の評価
○慢性期入院医療の適正な評価
○医療の提供が困難な地域に配慮した医療提供体制の評価

【効率化の余地があると思われる領域】
○平均在院日数の減少、社会的入院の是正

-改定の行方-

 10月30日(日)に「2012年度 診療報酬・介護報酬改定の行方」と題して、日経ヘルスケア主催のセミナーが開催されます。
  私の中では日経ヘルスケアは最も信頼性の高い情報を提供してくれる媒体だと思っています。 ちょっと手遅れかもしれませんが、まだお申込みでない病院は申し込んでみてはいかがでしょうか。
  私どもでは、このセミナーに参加することになっていますので、今後のブログで取り上げてみたいと思っています。

-何故救急が大事なのか?(その3)-

 紹介率の高い病院は別として、救急入院率・時間外入院率は通常診療のそれよりも高いのが普通です。
 通常診療で稼げない病院、多くの紹介患者を得られない病院にあっては、時間外の救急体制の拡充をお勧めします。
 入院患者獲得のチャンスが広がるだけでなく、時間外の救急体制下で入院した患者の多くが救急医療管理加算の対象となります。原価のかからない8千円の加算が7日間を限度として算定できるのはご存じのことと思います。通常の診療で8千円の収入を得るのにどれくらいの原価がかかるのかを計算してみてください。
  真剣に取り組まない手はないと思います。

-何故救急が大事なのか?(その2)-

 通常診療で診療機能を高め他の病院との差別化を図るには、優秀な常勤医師の招聘が必要になります。ところが、優秀な医師は優秀な医師のいるところ、もともと診療機能の高いところに集まるという現実があります。「優秀な医師の招聘が、現状打破の唯一の方法だ。」なんてことを続けていると、状況は悪化の一途ということになりかねません。 
 通常診療に比べて、時間外の診療についてはどこの病院も力を入れているとは言えません。よって、競争相手は格段と少なくなります。優秀な常勤医師は採用できなくても、優秀な当直医師は採用できるはずです。多少高い当直手当を払ってでも優秀な当直医師を複数(内科系と外科系)採用して、思い切って時間外の救急体制を厚く整備し、救急車を積極的に受け入れる。救急搬送先で困っているのは夜間・休日です。救急隊などへのPRを続ければ相当数の救急患者数・時間外患者数が見込めるはずです。

-何故救急が大事なのか?(その1)-

 急性期病院にとって何故救急が大事なのか?私なりの考えを以下にまとめてみました。
 診療報酬次回改定で、DPCの調整係数が廃止され、基礎係数に振り替えることを前提として、様々な協議が進められています。機能係数も含めて、具体的な係数配分の決定までにはまだまだ詳細な協議が必要だろうと思います。ただ、調整係数と基礎係数を比較すると民間病院の多くは、マイナスになるだろうと予測しています。
 基礎係数でのマイナスを補おうとするのであれば、機能評価係数を稼がなければなりません。機能評価係数の中で、日頃の取り組みが反映され、しかも係数のボリュームも大きいのが救急医療係数です。
 この係数は救急入院の数が多ければ多いほど高くなります。DPC算定病院にあって、何故救急が大事なのかがおわかりのことと思います。

-電子カルテについて一考-

 今、病院では電子カルテ(オーダリングシステム含む)の導入が進展しています。私が心配に思うのは、電子カルテ導入による莫大な費用負担です。導入時の初期費用は抑えられても、機能拡張時には他メーカーとの比較ができず、その度に莫大な費用を請求されるということをよく聞きます。また、保守費用もかなりの金額になります。更には一度導入してしまうと引き返しがきかず、ある程度のスパンで更新が必要になり、当然その費用も莫大です。
 電子カルテ自体は収入を生むものではありません。また、その使い方によっては効率化の逆方向に向かうこともあります。
 業者選定、機種選定、機能選択など、中長期での費用負担も含めて、しっかりした計画の下で電子カルテを導入したいものです。

-がん診療について一考-

「がん」に活路を見出す中小病院という興味深い特集記事が載っていました。その中で、「緩和ケア病棟の損益分岐点は17床」という記事が目に留まりました。施設基準上は7対1の看護配置ですが、2人以上の夜勤体制が条件のため病床数が何床であっても最低14人の看護職員が必要になります。よって、17床が損益分岐点というのは頷ける数字です。しかしながら、これは医師の配置が1人という前提での話のように思います。18床以上の緩和ケア病床となると、1人の医師で運営できるのか疑問です。緩和ケア病棟の運営が経営上いかに厳しいかがわかります。
 記事の同じページにがん拠点病院とホスピスの中間に位置する機能の病院を目指している病院のことが掲載されていました。これから、「がん診療」に取組む病院にあっては一考の価値ありではないかと思います。

特集記事:日経ヘルスケア9月号「がん」に活路見出す中小病院

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